はじめに

社会福祉法人は、地域社会の福祉向上を目的とした非営利法人です。高齢者福祉、障がい者支援、保育事業など、私たちの暮らしに密接に関わる事業を担っています。こうした法人は、税金や補助金などの公的資金を活用して運営されることが多いため、会計処理には高い透明性と正確性が求められます。

本記事では、社会福祉法人の会計制度の基本的な仕組みや、経理担当者が押さえておくべきポイントについて、公認会計士・税理士がわかりやすく解説します。

1. 社会福祉法人とは?

社会福祉法人は、社会福祉法に基づいて設立される非営利法人で、営利を目的とせず、公共性の高い福祉サービスを提供することを目的としています。主な事業には以下のようなものがあります。

  • 特別養護老人ホームやデイサービスなどの高齢者福祉事業
  • 障がい者支援施設の運営
  • 保育園や児童養護施設などの児童福祉事業

これらの事業は、国や自治体からの補助金・委託費によって支えられており、資金の使途や収支の状況を明確にするための会計処理が不可欠です。

2. 社会福祉法人会計の特徴

社会福祉法人の会計には、一般企業とは異なる独自のルールがあります。主な特徴は以下の通りです。

  • 複式簿記の採用:すべての取引を借方・貸方で記録し、正確な財務状況を把握します。
  • 社会福祉法人会計基準に準拠:厚生労働省が定める会計基準に従って処理を行います。
  • 事業区分ごとの管理:法人内で複数の事業を運営している場合、それぞれの事業ごとに収支を分けて管理する必要があります。
  • 財務諸表の作成義務:収支計算書、貸借対照表、財産目録などを毎年度作成し、監査や行政への報告に備えます。

3. 会計書類の種類と役割

社会福祉法人が作成する主な会計書類には、以下のようなものがあります。

書類名役割
収支計算書年度ごとの収入と支出を一年間の収入と支出の状況を明示し、資金の流れを把握
貸借対照表法人の資産・負債・純資産の状況を示し、財政状態を確認
財産目録法人が保有する財産(建物、備品など)の一覧を記録
事業活動計算書各事業の活動成果を数値で示し、事業の健全性を評価

これらの書類は、法人の健全な運営を支える重要な情報源であり、監査や行政のチェックにも使用されます。

4. よくある会計処理の課題

社会福祉法人の会計には、専門的な知識が求められる場面が多く、以下のような課題が発生しがちです。

  • 補助金の処理が複雑:交付決定額と実績額の差異、返還処理などが煩雑
  • 事業区分の誤り:収支を事業ごとに分ける必要があるが、仕訳ミスが起こりやすい
  • 固定資産の管理:減価償却や資産台帳の整備が必要で、手間がかかる
  • 決算業務の負担:書類作成や監査対応に多くの時間と労力が必要

5. 経理代行サービスの活用メリット

こうした課題を解決する手段として、経理代行サービスの活用が注目されています。専門知識を持つスタッフが会計処理を代行することで、以下のようなメリットが得られま

  • 正確な処理と法令遵守:社会福祉法人会計に精通した公認会計士・税理士が対応
  • 業務負担の軽減:経理業務を外部に委託することで、本業に集中できる
  • 迅速な制度対応:法改正や制度変更にも柔軟に対応
  • 決算・監査対応がスムーズ:必要書類の整備や監査対応もサポート

まとめ

社会福祉法人の会計は、専門性が高く、正確性と透明性が求められる分野です。経理担当者が基本を理解し、必要に応じて専門サービスを活用することで、法人運営をより安定的に、効率的に進めることができます。